ストレッチをする時に、ピーンと張りつめてカチカチだなぁ〜と実感する部分はありませんか?座って足を前に伸ばして前屈する時に、膝の裏側から腿の裏側がピーーンと張って痛くて伸びが感じられない方は、少なくありませんよね。
腿の裏側の筋肉は、『ハムストリング』と言いますが、『ハムストリング』とは太もも裏にある筋肉の総称です。ハムストリングは疲労しやすく固まりやすい筋肉とも言われています。
今回は、腿の裏側の筋肉『ハムストリング』について、まとめてみました。お勧めのストレッチも紹介致します。
ハムストリングとは
ハムストリングは、
⚫︎大腿二頭筋
⚫︎半腱様筋
⚫︎半膜様筋
の総称です。主に太ももの裏側の筋肉を指します。ハムストリングの由来はHam(ハム)とStrings(ひも)で豚のもも肉をハムにする際、これらの筋肉の腱をひっかけて作られる事に起因します。
ハムストリング筋は「ランナー筋」とも呼ばれ、走ることが多い人はとても良く発達しています。特にスプリンターのハムストリングは目覚ましく発達しています。膝を曲げて股関節を伸ばす動作において使われる筋肉で、運動前後のストレッチがとても大切です。
大腿二頭筋
大腿二頭筋の主な働きは膝関節の屈曲です。また、大腿二頭筋の長頭は2つの関節をまたぐため「二関節筋(にかんせつきん)」と呼ばれています。名前の通り膝関節のみならず、股関節の伸展にも関与している関節です。この筋肉が固まると骨盤が後傾したり、膝が内側に入って半月板の故障を招いたりする恐れがあります。
半腱様筋
半腱様筋は主に膝関節を屈曲させる作用を持ち、股関節の内転や下腿部の内旋にも作用します。また大腿二頭筋と同様、膝関節と股関節をまたぐ二関節筋です。
特に短距離走の選手に発達が見られる筋肉です。走行中に急制動では膝関節伸展位で股関節の過屈曲が強要されるため、半腱様筋や半膜様筋の肉離れが生じやすいと言われています。
半膜様筋
半膜様筋は大腿二頭筋や半腱様筋と同様二関節筋で、はたらきも半腱様筋とほとんど同じです。加えて、膝関節屈曲時の内側半月板や後方関節包の挟み込みを防止し円滑な屈曲運動を誘導している役割を持ちます。
また半膜様筋をストレッチするためには、股関節をやや内旋させた状態で行うと効果的にストレッチを行うことができます。
また二関節筋はヒトだけに限らず、哺乳類をはじめ爬虫類、鳥類、両生類の動物、さらには外骨格の昆虫類にも存在することが報告されています。
ハムストリングをほぐす効果とは…
下半身の疲労回復効果
ハムストリングは非常に負担がかかる部分なので、疲労しやすく固くなりやすいです。また、ハムストリングが固くなると腰の筋肉が引っ張られて腰痛を起こしやすくなります。その結果血行が悪くなり、腰から下の血液循環が滞ってより疲労の回復が遅れます。
ハムストリングをしっかりとほぐすことで、血行を改善することができ、不要な老廃物や二酸化炭素がスムーズに体外へ排出されます。栄養素や酸素も身体全体へ運搬されるため、エネルギーも十分に補給することができます。
肉離れの防止
ハムストリングスの肉離れは、走行中に起こることが多いと言われています。原因として挙げられるのは、不適切な走行姿勢やフォームです。姿勢やフォームを改善していくことはもちろん、運動前後のストレッチやケアを欠かさず行うことで肉離れのリスクを削減できます。
腰痛の予防
ハムストリングスが硬いと前傾姿勢をとるときにハムストリングスが伸びてくれないため、背骨に負担がかかり結果的に腰痛の原因となってしまいます。ハムストリングスを柔らかくすることでスムーズに前傾姿勢をとることができるようになるため、腰痛を予防したいという方はハムストリングスのストレッチは日常的に行うことをおすすめします。
お勧めハムストリングストレッチ3種類は、こちら
もも裏ストレッチ(椅子バージョン)
1. 椅子に浅く腰をかけて、こぶしひとつ分足を開き背中を伸ばし両手を脚の付け根におきます。
2. 右足だけをまっすぐに伸ばしてつま先を上に向けておきます。
3. 背中はまっすぐにしながら、股関節から体を前に倒していきます。
4. 10秒ほどキープしたら2の姿勢に戻ります。
5. 左右の脚を入れ替えて1~4を繰り返しましょう。セット数の目安
10〜15秒を1セットとして5~10セットを目安にやってみます。注意するポイント
・座った時点で背中が丸くならないように骨盤を立てておきます。
・からだを前に倒すときも背中はまっすぐにして倒します。
・ももの裏側が伸びていることを確認しながらやりましょう。
片足前屈ストレッチ
1. 右脚を伸ばし、左脚は膝で二つ折りにするように曲げて座ります。背筋はまっすぐ伸ばします。
2. ゆっくりと呼吸をしながらへそを右脚先へ近づけます。
3. できる場合は、右足を両手でつかみながら体を前に倒していきます。
4. 10秒ほどキープしたら1の姿勢に戻ります。
5. 左右の脚を入れ替えて1~4を繰り返しましょう。セット数の目安
左右交互に1回ずつを1セットとして5~10セットを目安に取り組みましょう。注意するポイント
・初めの姿勢になるときは腰が後ろに落ちてしまわないようにしっかりと骨盤を立たせましょう。
・前傾するときは背筋が1本の棒になっているイメージで!
・呼吸をしっかりと続けてリラックスしてください。・もも裏が伸びているのを意識してストレッチをしましょう。
寝ながらタオルストレッチ
1. フェイスタオルを用意して仰向けに寝ます。
2. 左脚をあげ足裏にタオルをかけます。膝は、曲がっていて大丈夫です。
3. 息をはきながら、タオルを持ちゆっくり胸の方へ引き寄せます。膝は少し曲がった状態です。
4. 引き寄せたところから、ゆっくり膝を伸ばしていきます。少しずつ、伸びを感じながらやりましょう。
5. 10~30秒間キープする。
6. タオルをゆるめたら、ゆっくりと脚を床へ下ろし1の姿勢に戻る。
7. 右脚も同じように2~6を繰り返す。セット数の目安
左右交互に1回ずつを1セットとして3~5セットを目安に取り組みましょう。注意するポイント
・タオルを引いて脚を胸に近づけるときはしっかりと呼吸を吐き出してリラックスしましょう。
・痛みがあるところで止めずに手前のところで止めて少しずつ膝を伸ばしていきます。
・ストレッチしている脚と反対の脚や腰が床から浮かないようにします。
・自然な呼吸を続けてできる範囲で徐々に膝を伸ばしてストレッチしてください。
覚えておきたい筋肉と神経の関係
筋肉が急激に強く伸ばされると筋肉の中にある筋紡錘と言う受容器が危険を察知し、それ以上伸ばされないよう反射的にその筋肉を収縮させる生理的な作用が起こります。これを『伸張反射』といいます。『伸張反射』が起きると筋肉を硬直させてしまうため『伸張反射』が起きないよう、無理な反動をつけずにストレッチをすることが大切です。
特に、体の固い人がより深く曲げようと反動をつけて行うと、伸ばそうとしている筋肉が反射的に収縮しようとしてしまいます。しっかりと伸ばすためには、より深く曲げる必要はありません。できるだけゆっくりじんわりと曲げていくことがコツになります。
まとめ
このハムストリングスの柔軟性が乏しいと、高齢者に特有の円背姿勢(アゴがあがった前かがみの姿勢)になってしまいます。これは二関節筋であるハムストリングスが骨盤を引っ張ることで骨盤が後ろに傾き、腰が丸くなって姿勢が悪くなるためです。 ハムストリングスは、普段の暮らしの中でなかなか意識してストレッチすることがない部位かも知れませんが、スポーツの後のケアや腰痛、姿勢の改善などに非常に重要な部分ということになります。ぜひ、毎日の習慣になさってください。