
今年の夏は、本当に暑い毎日でしたね。屋外で活動をしていて、汗をたくさんかくとトイレの回数が少なくなっていたり、尿の色が濃かったり透明だったりするのに、お気付きでしょうか?その時、からだの中で何が起きているのでしょうか?
腎臓で作られる尿
血液は酸素や栄養素を全身に運ぶとともに、老廃物や毒素も受け取って循環しています。全身をめぐって汚れた血液は、やがて腎臓を通ります。腎臓では、血液から老廃物や毒素をろ過して取り除き、きれいに浄化します。また、余分な水分なども一緒に取り除きます。
腎臓で取り除かれた老廃物や毒素、余分な水分などは、尿として体外に排泄されます。腎臓が一日にろ過する血液の量は150Lといわれており、大型のドラム缶1本分に相当します。尿を作ることは、腎臓の主要な仕事の一つで、この機能が低下すると、体中に老廃物や毒素が蓄積してしまうことになります。
血液をろ過して尿がつくられる
腎臓で尿を作っているのは、「ネフロン」という構造です。ネフロンは腎臓の最小単位の構造物であり、腎臓1個に約100万個あります。ネフロンは毛細血管が詰まった「糸球体」と呼ばれる組織から始まります。糸球体はボーマン嚢(のう)という袋に包まれています。糸球体に血液が送られると、糸球体ろ過により毛細血管からボーマン嚢に水分がにじみ出します。これが尿の元(原尿)となります。
次に原尿は「尿細管」という細い管に流れていきます。尿細管は、原尿から塩分やたんぱく質など、体にとって必要な物質を選び出し、その約99%を再吸収します。最終的に残りの1%が、不要な老廃物を含んだ水分である尿として、体外へ排出されます。

尿の成分
尿の成分の90%以上は水分です。そのほかに、尿素、アンモニアなどのタンパク質の代謝によって作り出される老廃物が含まれます。1日の尿量は健康な人では約1L〜1.5Lです。腎機能に障害があると、500mL程度になったり(乏尿)、2L以上になったり(多尿)します。腎臓は、老廃物や余分な水分を排出することで身体を健康に保っています。そのため、尿の色や量などによって、全身の状態を知ることができます。
尿の色と病気の関係
健康な人の尿は薄い黄色です。これは、尿中に含まれるウロビリン特有の色です。尿中に通常なら微量に混じっているウロビリノーゲン(無色)が腎臓で酸化されてウロビリン(褐色)になります。ウロビリノーゲンは外気に触れても容易にウロビリンに変わるので、尿をそのまま放置すると褐色に変わるのはそのせいです。
健康な人の尿の色は、淡黄色から淡黄褐色です。これは、胆汁に含まれる赤褐色の色素が混ざっているためです。この尿の色は、体調によって変わります。
濃い黄色
起床時や、運動などで汗をたくさんかいた時には、少し色の濃い尿が出ます。脱水で体の水分量が少なくなると、尿中の水分が減ってウロビリンの濃度が高くなるので、黄色も濃くなります。黄色の濃さが強い場合は、脱水状態に対して腎臓がうまく対応している、ということになります。このときは、できるだけ早く水分摂取をしましょう。
無色透明
反対に、水分をたくさん飲んだ時や、汗をあまりかかない寒い時には、淡い色の尿がでます。脱水状態と逆で、大量に水分を摂取したりすると、体の水分量が増えて、尿中の水分が増えます。そうすると、尿中のウロビリンが薄くなって、黄色が目立たなくなり、尿が無色透明に見えます。
またビールなどアルコール飲料などを飲んでも、アルコールの利尿作用により、すぐ尿の色が透明になります。大量の水分やアルコール飲料を摂取していた場合、体の異常ではないので心配いりません。

透明な尿に隠れた病気
糖尿病が代表例です。血糖値が上がると、腎臓は無駄な糖分を排出しようとして一緒に大量の水分を尿中に排出します。そうすると尿中の水分量が増えて、尿の色が透明に近くなります。
赤色
尿に血が混じっている、つまり血尿です。目で見て分かる血尿は肉眼的血尿といわれています。血尿の色合いによって、表現の仕方は違います。色が濃くなるとトマトジュース、古い血の塊が見られるときは鉄さびや赤ワイン、薄くなるとスイカの汁、などと表現されることもあります。ただし、尿の色合いと病気の程度(悪性度)とは関連していません。血尿の原因は、尿路結石、尿路感染症、泌尿器がんなどさまざまです。
オレンジ色
にんじん・かぼちゃなど暖色系の野菜や果物には、オレンジ色の栄養素であるベータカロチンが含まれているので、通常の尿であっても尿の色がオレンジ色になることがあります。総合ビタミン剤やサプリメントには、ビタミンC、上述のベータカロチン、またはビタミンB2などが含まれており、定期的に服用していると、尿が黄色~オレンジ色に変わることがあります。
茶褐色
肝臓が悪くなって黄疸を生じると、尿がオレンジ色~茶褐色になることがあります。黄疸とは、血液中のビリルビンが増えて、目や皮膚など身体中が黄色くなる状態のことです。通常、肝臓はビリルビンを胆汁の成分として腸の中へ排出します。
肝臓の働きが弱くなると、胆汁中にビリルビンを排出できなくなり、血液中のビリルビンが増えて、尿の中にもビリルビンが混じります。ビリルビンは茶褐色~緑のような色で、ビリルビン尿になると茶褐色になります。
激しい運動をした後や、事故などで筋肉が大量に壊れた時に、筋肉の痛みを伴って茶褐色の尿が出ることがありますが、これをミオグロビン尿といいます。筋肉にあるミオグロビンという物質が壊れて尿に混じるためです。ミオグロビン尿と上述のビリルビン尿とはよく似ていますが、ビリルビン尿は泡立ちやすく、その泡にも色がついていますが、ミオグロビン尿は赤ワインに似た色です。
まとめ
長時間炎天下で作業をした後など、「めちゃくちゃ濃い黄色だな、大丈夫かな?」と思うことはありますし、心配になるのかもしれません。それは腎臓がしっかり働いている証拠で、脱水になっている証拠なんですね。一時的に尿の色が濃くなったとしても、十分に水分補給をして、元に戻れば多くの場合は特に心配はありません。もちろん、脱水は良いことではありません。長時間続くと「腎不全」の原因になります。また、短期間でも極度の脱水と体温上昇が重なると、いわゆる「熱中症」となり、意識障害などを生じ、命の危険に晒されることもあります。びっくりするくらいの濃い尿は、「脱水に気をつけろ」という体の黄色信号なのです。

尿の色の異常は、比較的気づきやすい症状です。上記で述べた病院にかかったほうがよいとされる血尿やビリルビン尿、等を認めた場合は、必ず泌尿器科にかかるようにしましょう。